LOGINすぐに扉を閉じて鍵をかける。 「あ、あなたたち……どうして…………っ」 「シェリアン様!」 私は無事を確認したくて駆け寄った。 そして体のすみずみまでチェックし、どこも傷などがないことを確認すると、大きな息を吐く。 「良かったです…………ご無事で安心しました」 「クリスティーナ……!」 シェリアン様は感極まり、涙を流して私に抱き着いた。 お可哀想なシェリアン様……あのような場所で自身が人質として攫われるなんて夢にも思っていなかったはず。 私の首に回した腕が、小刻みに震えている。 どれほど怖かっただろう。 でも王女としての矜持を持ち、お心を奮い立たせていたに違いない。 私は宥めるように背中を摩り、彼女の気持ちが落ち着くのを待った。 やがて震えは止まり、ゆっくりと顔をあげたシェリアン様の表情は少し安堵の色が窺える。 「シェリアン様、よくぞ耐えてくださいました」 「……っ、当然よ。あいつらの前で弱音なんて吐くものですか。私はツェットリーニ王国の王女なのだから」 「あなたは強いお方ですね。ご無事なお顔を見られて安心しましたよ」 「カルロ王子……あなた、本当にこの国をひっくり返す気?」 シェリアン様の問いにカルロ様は真剣な面持ちで即答する。 「もちろんです。この世界のために為すべきことは何か、もう分かっています」 「そう……良い顔をしていますわ。応援しますわよ」 「感謝します……っ」 私とダンは顔を見合わせる。 カルロ様はシェリアン様のお言葉に顔を赤くし、少し俯いた。 お二人の会話が良い感じだわ……もしかしたらこの先、ツェットリーニ王国とカラドゥス王国の関係は良好になっていくかもしれない。 そんな未来が見えた気がして、思わず嬉しくなる。 「ラディ、ドミニク様に知らせてほしいの。シェリアン様は無傷でご無事ですって」 『お任せください!』 「気を付けてね」 『すぐに戻ります』 この部屋は地下で窓がないため、扉を少し開くとラディが飛び立っていった。 彼は小さいし、見つかることもないでしょう。 私たちもシェリアン様に要件を伝えたらここを出なければ。 「シェリアン様、これからドミニク様と帝国軍がこのカラドゥス王国の王城に向かってきます。恐らく1、2日中には到着されるはず」 「ええ」 「彼らが外からカラドゥス王
翌日、ダンとカルロ様と共にカラドゥス王国の王城へと移動した。 まだシェリアン様は到着していないとは思っていたけれど、魔女の眼を使ってみてもやはり城内に彼女の気配はなく……。 その日に朝、昼、夜と3回にわたって移動してみたけれど、シェリアン様の気配を感じることはできなかった。 やはり女性を連れて隠密で動くにはそれなりに日数がかかるということなのだろうと思い、その日は諦めてまた翌日に同じように動くことになったのだった。 朝と昼は空振りに終わり、その夜——。 「では、また行きましょう」 「うむ。カルロ、何度もすまないが昨夜と同じ場所を想像してくれ」 「分かりました」 ダンからの要求にカルロ様は静かに頷いて返事をする。 彼がダンが持つ手鏡に手を置いたので、皆一緒にカラドゥス王国の王城へと瞬間移動したのだった。 ◆◆◆◆ 私たちが到着したのは、王城の裏庭。 あまり手入れされている感じはなく、私たちの膝丈くらいまで雑草が生い茂っている。 王城自体も古い古城といった感じで、風情はあるけれど手入れされている様子ではないというのが初見の印象だった。 王宮や王城は国の状態を物語っているので、カラドゥス王国が豊かな国ではないということだけは理解できる。 シェリアン様を攫うくらいですものね……リドメキシアの流通も止められ、相当切羽詰まっているのでしょう。 到着した瞬間、辺りを見回して口を開いた。 「うむ。やはり昨夜とは違う気配を感じるな……城内もバタバタしている様子だ」 彼女の眼が金色になっている……魔女の眼を使ったのね。 「シェリアン様が到着している可能性が高いわ。カルロ様、ここからどうやって王城内へ?」 「城の内部には隠し通路が張
ダンの庵から降りると、見上げたカルロ様は感嘆の声を上げた。 「中に居たら気付きませんでしたが、素晴らしい庵ですね!」 「フッ。当然だ。なかなか人間が侵入することは難しいだろう」 「古の魔女が住むに相応しいです!」 「お主、なかなか見ごたえのある男だな」 ダンは住まいを褒められて上機嫌になり、カルロ様を可愛がり始める。 こんなところを皇帝陛下に見られたら、カルロ様のお命が危なくなるのでは……。 カルロ様の方はと言うと、エデンの何もかもが目新しく新鮮で、子供のように瞳を輝かせて目移りしていた。 ラディは大きくなり、悠々と羽ばたいている。 まだ夜ではないので珍しい生き物は見られないけれど、カルロ様にとっては全てが珍しいようで、あちこち移動しながら触ろうと試みたりしていた。 「うふふっ。カルロ様ったら……ここに住むと言いそうな勢いね」 「あやつめ。触れると怒る生き物もいるというに」 ダンがそう言った瞬間。 「うぁっ!」 「カルロ様!」 「カルロ!!」 私たちが駆けつけると、足の長いイノシシの体躯をした生き物に顔を舐められている最中だった。 「この子はイノシシ、ではないのよね?」 「はるか昔の姿だな。もとは足も少し長かった……しかし随分気に入られたようだな、カルロ」 ダンは声をかけつつも助けようとはしない。 舐められ続けているカルロ様はこちらに助けを求めているのだけど……分かっていて放置しているような。 「ぶふっ……ぐっ……少し鼻を撫でただけ、なんですっ!」 「はっはっはっ。気持ち良かったのだろう」 ダンは大
どうやら手鏡が導いた場所はカルロ様の部屋だったらしく、窓辺に佇むカルロ様の後ろ姿が目に入ってくる。 そしてすぐに私たちの気配に気づいたのか、殿下は慌てた様子で振り返った。 「え……クリスティーナ?!それにオブシダン様?!!なぜお二人が……!」 『私もおるのですがね……』 「ふふっ」 私の肩に乗っていたラディがため息交じりに呟くのが可愛らしくて、思わず笑ってしまう。 「突然ご訪問してしまって、申し訳ございません」 「いや、いいんだ。嬉しいよ。オブシダン様もお会い出来て光栄です」 「フッ。前よりは挨拶ができるようになったではないか」 カルロ様は前にダンを怒らせたことがあるので、彼女の言葉にたじたじだった。 でも今はそんな事を話している場合ではないわね。 「カルロ様、私たちは一足早くカラドゥス王国へ行こうと考えているのです」 「……シェリアン王女の為かい?」 「はい。人質なので命の危険はないとしても、どのような扱いを受けているのか……心配なのです」 「相変わらず君は優しいね。私のもとへ現れたということは、私も一緒の方がいいのだろう?」 「はい……」 「もちろん一緒に行くよ。君が迎えに来てくれるなんて嬉しすぎるくらいなんだから」 そう言ったカルロ様はとてもご機嫌で、すぐに持ち物の用意をし始めた。 カルロ様がいらっしゃればカラドゥス王国の王城内も分かりやすいし、心強い。 それにカルロ様自身もカラドゥス王国でやりたい事があるでしょうし……お互いに一石二鳥のはず。 「さぁ、準備完了だよ」 「では参りましょう」 「まずは我の庵に寄るぞ。色々と
帰りの馬車にて。 私はドミニク様の膝の上に乗せられながら、馬車に揺られていた。 いつもなら馬車の中では穏やかな会話をしているけれど……今はそんな雰囲気ではなく。 ドミニク様がとても落ち込んでいらっしゃって、私自身もどういう言葉をかけていいのか分からなかった。 目の前で大切な姪が連れ去られてしまったのですもの。 そのショックは計り知れない。 もし私がその場にいれば防げたかもしれない。 私は自分がすぐに彼のもとへ行かなかったことを大いに後悔していた。 「ドミニク様」 私が声をかけると、いつもなら嬉しそうにこちらを見てくれるのに、今はとても目に力がない。 「どうしたんだい、ティナ」 その表情……無理に笑っていて、胸が痛くなる。 だからこそ伝えなくては。 「私、当初の予定よりも早くカラドゥス王国へ参ります」 「……なぜ?」 皇帝陛下の作戦は、カラドゥス王国を内と外、両方から叩くというものだった。 私とダンとカルロ王子が先にカラドゥス王国へ行き、カルロ王子が私を連れて来たという名目で王城へ乗り込み、私とダンの力で事城内を制圧する。 外からは皇帝陛下やドミニク様が帝国軍を率いて進軍し、完全にカラドゥス王国を制圧するというもの。 常に連絡を取り合いながら同時進行で進めていこうという話になった。 その作戦自体に問題はないし、私とダンがいれば城を制圧するのは容易いと思う。 でも————。 「制圧自体は大丈夫ですが、とにかくシェリアン様が心配で……彼女の無事や安全が確認できないと。国王陛下や王妃殿下にも早くお知らせしてあげたいですし……」
ダンスを一通り終えてそろそろドミニク様のもとへ行こうとした時、突如腕を掴まれて振り向く。 するとそこには本人が立っていた。 でもその表情は凍り付いていて、何か良くないことが起こったのがすぐに伝わってくる。 「ドミニク様……?」 「叔父上、何かあったのですか?」 「落ち着いて聞いてほしい……シェリアンが連れ去られた」 「「え?!」」 「詳しい事情は歩きながら話す。ひとまず王宮内へ行こう……!」 私とディクセル様は共に頷いた。 そして王宮内へ向かう間にドミニク様から事情を聞き、あまりの手際の良さに驚きを隠せない。 「そんな一瞬で……」 「私の失態だ……!すぐ隣にいたのに!」 「叔父上、相手も手練れです。失敗は許されない。とにかく今はシェリアンを救い出す方法を皆で考えましょう」 すぐに皆が集まる応接間へと到着し、扉は固く閉じられて鍵がかけられた。 王国の王女が連れ去られたことは、絶対に民に知られるわけにはいかないものね。 応接間には国王夫妻や皇帝陛下、バズズ様、セリス嬢、カルロ王子が待っていた。 国王陛下も王妃殿下も顔色が真っ青だわ……ディクセル様はお二人に寄り添う為に駆けていく。 そんな中、皇帝陛下が冷静に口を開いた。 「集まったか。カルロからも聞いたが、刺客は彼の教育係でもある爺や……カラドゥス王国先王の側近メディチ・パラボーナだ。隠密行動を得意とする男でもう引退したかと思っていたが」 「それほどカラドゥス王国も焦っているということでしょう」 皇帝陛下の御言葉にバズズ様が冷静に返す。 「奴らの要求は白の魔女、クリスティーナだ。帝国からリドメキシ
王家主催の夜会当日―――― 両親に無理を言い、今日はとびきりオシャレをさせてもらった。 ごくごく薄い水色を基調としたプリンセスラインのドレスに、腕はオフショルダータイプのパフスリーブで、胸元は大胆にあけてみた。 髪は綺麗な真っすぐのホワイトブロンドだと両親にもよく褒められるので、あまり結い上げずにブルーグレーの蝶のモチーフの髪飾りだけを着ける。 首元には派手すぎないジュエリーと扇を持ってエントランスに向かうと、ドミニク様がすでに迎えに来てくれていて、私を階下で迎えてくれた。 「ティナ、凄く素敵だよ。見違えた……すっかり大人の女性だね」 ドミニク様は私のドレス姿
王家主催の夜会・7日前―――― ヴァッセル伯爵家の一人娘として生を受けた私は、クリスティーナと名付けられ、この春に19歳を迎えたばかりだった。 そして2歳年上の幼馴染の婚約者がいる。 見た目はお子ちゃまだと婚約者に言われるけれど、もう19歳だし、王家主催の夜会ではしっかりと貴族女性らしく振舞おうと意気込んでいた。 そんなある日、いつものように朝の食事をとろうとホールに入ると、すでにお父様とお母様が座っていたので私も急いで2人に挨拶をする。 「お父様、お母様、おはようございます」 私は完全にお母様に似たようで、髪色などもお母様と同じホワイトブロンドなので、まだまだ若
ツェットリーニ王国・オーレンブルク公爵邸―――――― 月がひと際美しく光り輝き、その形は欠けることなく全てをこの世界に露わにしている夜。 私は長年片想いしていた人の邸宅に来ていて、彼の力強い腕でベッドに縫い付けられながら体を暴かれている。 少し前までは、話せるだけで天にも昇るほど嬉しく、ただ見ているだけでもいいと思っていた。 それなのに……今ベッドでは彼の美しい指先が私の衣服を剥がしていき、舌が体を這っていく。 そのたびに私の体は女性としての悦びに跳ね上がり、得も言われぬ声を出しながら彼に応えてしまう。 こんな自分は知らない。
中に入れた彼の指がグイッと曲げられ、一か所をトントンし始める。 指の動きに合わせて、体中に電流が走ったかのような感覚に襲われ、嬌声が大きくなっていった。 「あ?や、ソコ…………だめっ…………あぅ……ひっ、あぁっ……!」 「ここが気持ちいいんだね、もっと気持ちよくなっていいんだよ」 「あぅ……あ、あっ……何か、キちゃう……~~~っ!」 今まで感じた事のない快感が襲ってきて、必死にドミニク様の頭にしがみついた。 そして体が激しく痙攣したと同時に、目の前でチカチカと火花が散っていく。 「ふっ……んんっ…………」 今のは何? さっ